それからしばらくして――
みんなそれぞれ部屋に戻り、家の中もすっかり静かになった。
私は一人、リビングに戻る。
昼間、昌枝さんからもらった花束が、
棚の上に置いたままだったのを思い出した。
せっかくだから花瓶に入れて、玄関に飾ろうと思った。
一本ずつ花を整えながら、位置を少しずつ変えてみる。
「……よし、と」
なんとか形になった気がして、小さくつぶやく。
その時だった。
背後から、ふわっといい匂いがした。
同時に、すっと手が伸びてくる。
骨ばっているのに、指先は不思議なくらいしなやかだった。
「――ここ」
驚いて振り向く。
「!」
隼人だった。
どうやら風呂上がりらしく、髪が少しだけ濡れている。
髪先から落ちた一雫が、喉元をすっと伝って落ちた。
隼人は私のすぐ横に立ったまま、花瓶の花を指先で整えた。
「こうした方が、色が喧嘩しない」
さっと花の位置を変える。
さっきまで少しバラバラだった花が、
不思議なくらいきれいにまとまった。
「……本当だ」
素直に感心してしまう。
「ありがとう」
隼人は一瞬だけ私を見て、
口元だけ、わずかに緩んだ気がした。
そんな顔、初めて見た気がする。
「あ……」
小さく声が漏れる。
隼人は視線を花に戻して、ぽつりと言った。
「その花、お前っぽい」
「え……?」
聞き返すが、隼人はそれ以上説明する気はないらしい。
少し間を置いてから、思い出したように言った。
「……風呂、空いてるけど」
「っこれ、玄関に置いたら入る!」
隼人は軽くうなずくと、そのままリビングを出ていった。
私はしばらく、その場に立ったままだった。
遠ざかっていく背中を、つい目で追ってしまう。
花瓶の中の花が、かすかに揺れていた。
みんなそれぞれ部屋に戻り、家の中もすっかり静かになった。
私は一人、リビングに戻る。
昼間、昌枝さんからもらった花束が、
棚の上に置いたままだったのを思い出した。
せっかくだから花瓶に入れて、玄関に飾ろうと思った。
一本ずつ花を整えながら、位置を少しずつ変えてみる。
「……よし、と」
なんとか形になった気がして、小さくつぶやく。
その時だった。
背後から、ふわっといい匂いがした。
同時に、すっと手が伸びてくる。
骨ばっているのに、指先は不思議なくらいしなやかだった。
「――ここ」
驚いて振り向く。
「!」
隼人だった。
どうやら風呂上がりらしく、髪が少しだけ濡れている。
髪先から落ちた一雫が、喉元をすっと伝って落ちた。
隼人は私のすぐ横に立ったまま、花瓶の花を指先で整えた。
「こうした方が、色が喧嘩しない」
さっと花の位置を変える。
さっきまで少しバラバラだった花が、
不思議なくらいきれいにまとまった。
「……本当だ」
素直に感心してしまう。
「ありがとう」
隼人は一瞬だけ私を見て、
口元だけ、わずかに緩んだ気がした。
そんな顔、初めて見た気がする。
「あ……」
小さく声が漏れる。
隼人は視線を花に戻して、ぽつりと言った。
「その花、お前っぽい」
「え……?」
聞き返すが、隼人はそれ以上説明する気はないらしい。
少し間を置いてから、思い出したように言った。
「……風呂、空いてるけど」
「っこれ、玄関に置いたら入る!」
隼人は軽くうなずくと、そのままリビングを出ていった。
私はしばらく、その場に立ったままだった。
遠ざかっていく背中を、つい目で追ってしまう。
花瓶の中の花が、かすかに揺れていた。
