桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜

地上へ戻ると、キッチンからいい匂いが漂ってくる。

そのあと、昌枝さんと一緒に昼ご飯を食べた。

久しぶりの昌枝さんの料理は、やっぱり美味しい。
気づけばお腹いっぱいになっていた。

食後、軽くお腹をさする。

……ちょっと食べすぎたかも。

気分転換に、三階へ上がる。

自分の部屋の前を通り過ぎ、廊下の奥にあるバルコニーのドアを開けた。

ドアを開けると、ふわっと外の空気が流れ込んできた。

バルコニーは思ったより広い。
片側にはウッドデッキが敷かれていて、観葉植物がいくつか並んでいる。
白いリクライニングチェアも置かれていた。

もう半分は人工芝が広がっている。
昔からここは、私のお気に入りの場所だ。

私はウッドデッキ側の椅子に腰を下ろす。
背もたれを倒すと、空が広く見えた。

ここでぼんやり空を眺める時間が、昔から好きだった。

――昔は、よく颯太と一緒に来ていた。

まだ小さかった颯太が、私の隣にちょこんと座って。

同じように空を見上げていたのを思い出す。

思わず、くすっと笑った。

「可愛かったなぁ……あの頃の颯太」

いつからあんなに生意気になったんだっけ。

そんなことを考えていた時、スマホが震えた。

画面を見ると、海外にいる母からだった。

私はすぐに電話に出た。

「お母さん!」

『りあ? どう? 元気にやってる?』

「……うん。まあね」

『なによそれ』

電話の向こうで、母がくすっと笑う。

「お母さんは? 原稿、進んでる?」

作家の母は、今も締切に追われているはずだ。

『うん、なんとかね』

同じような返しに、思わず小さく笑ってしまう。

……やっぱり親子だな。

その時、電話の向こうから、
カチ、カチ、と何かを点けようとする音が聞こえた。

「……?」

『学校はどう?』

「今日行ったよ。挨拶だけだけど。瑞稀と同じクラスだったの! ……本当によかった」

『……そう』

母の声が、少しだけやわらぐ。

安心しているのが、なんとなく伝わってきた。

『あ、そうそう。あんたの荷物送っといたから。一週間以内には届くんじゃない? たぶん』

「ありがと」

このアバウトさも、相変わらずだ。

カチ、カチ

……まただ。

さっきから続いている音。

「……お母さん、何して――」


『……ちょっと大ちゃん! これ火つかない! どうやるんだっけ!?』


突然、電話の向こうで母の声が大きくなる。

『はいはい今行くー! 大丈夫だから、薫さんは座ってて!』

続いて聞こえてきたのは、父の声だった。

『早く! お湯がないとカップ麺食べられないじゃない』

「……」

母は、家事能力がほぼゼロに等しい。

……お父さん、ごめん。

私は心の中でそっと謝った。

『じゃあ、また連絡するわ』

「うん。……お父さんにもよろしくね」