桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜

家のドアを開けた瞬間、人の気配がした。

「ただいまー」

声をかけると、すぐにキッチンからエプロン姿の女性が顔を出す。

「りあちゃん!」

「昌枝さん!」

靴を脱ぎ捨てて駆け寄ると、昌枝さんはそのまま私をぎゅっと抱き寄せた。

「おかえり、りあちゃん。本当に久しぶりだねぇ」

「ただいま、昌枝さん」

ふわっと漂う料理の匂い。
懐かしいその香りに、胸の奥がほっと緩む。

しばらくして昌枝さんが体を離し、目を細めて私を見つめた。

「しばらく見ないうちに、お姉さんになったね。きれいになった」

「そ、そうかな?」

ちょっと照れてしまう。

「うん。……あ、そうだ。ちょっとこっち来て」


呼ばれてリビングに行くと、小さな花束を差し出された。

ピンクを中心にした、可愛らしい花たち。
やわらかな色合いが、春の終わりの光によく似合っている。

「はい、これ」

「え?」

「来る時に通りかかった花屋さんで見つけてね。なんだか、りあちゃん思い出して」

思いがけない贈り物に、胸がじんわり温かくなる。

「ありがとう」

花束を大事に受け取ると、昌枝さんが嬉しそうに笑った。

「よかった、喜んでくれて」

「うん! ……あ、そうだ。昌枝さん、私のお土産食べてくれた?」

シンガポールから戻る時、桐生家のみんなと昌枝さんにチョコレートを買ってきていた。
リビングのテーブルに置いたままだったはずだ。

テーブルに駆け寄り、箱を開ける。

「……あー!」

中はきれいに空っぽだった。

……絶対、颯太だ。

後ろから昌枝さんがひょいと覗き込んで、豪快に笑う。

「いいのいいの。りあちゃんと会えただけで嬉しいんだから」

「でも……」

空箱を見つめながら、私はため息をつく。

マーライオンのチョコなんてベタすぎる、って文句言ってたくせに。

「それより、お昼ご飯もうすぐできるから待っててね。りあちゃんの好きなハンバーグにしたから」

その言葉に、顔が明るくなる。

「うん!」

昌枝さんがキッチンへ戻っていく。

私は花束を抱えたまま、その場でふと足を止めた。

……そうだ。

俊兄に鍵、返さなきゃ。