桐生家の四兄弟と私〜義兄弟に囲まれてます〜

敦兄に頭をぐしゃぐしゃに撫でられて——

「ちょっと! あっちゃん! 髪の毛ボサボサになっちゃう!」

「ああ、悪い悪い」

敦兄はぱっと手を離して、少し目を細めて私を見る。

慌てて髪を整える私を、面白そうに眺めながら——

「……ちょっと会わないうちに、また少し大人っぽくなったか?」

「そうかな?」

なんだか恥ずかしくて肩をすくめる。

「去年の夏、会ったばっかりじゃん。
シンガポールまで来てくれたのに」

「ああ、そうか」

敦兄は頷いて、それから笑う。

「でも俺にとっては長かったの!」

次の瞬間、またぐいっと肩を引き寄せられる。

「きゃっ」

思わず声が出た。

敦兄の腕の中は、昔よりずっと大きく感じた。

「……っと、悪い」

はっとしたように、敦兄がすぐ離れる。
そしてすぐ、その視線が、足元のスーツケースに落ちた。

「これ、運んでやるよ」

ひょい、と軽く持ち上げる。

「お前の部屋、そのままだから」

「……うん!」

胸の奥が、ふっと温かくなる。

ちゃんと、まだ……。
私の部屋があるんだ。

敦兄は私のスーツケースを軽々と持ち上げると、そのまま階段を上り始めた。

私はその背中を追いかける。 

階段を上る敦兄の後ろ姿。
昔から変わらない、少し癖のあるダークブラウンの髪。
背中も肩も、前よりずっと大きくなっている気がした。

「ねぇ、あっちゃん」

「ん?」

「お母さんから連絡なかった? 私が戻るって……」

「あー! あったあった!」

敦兄は振り返りもせず、あっけらかんと言う。

(かおる)さんが、到着の日言ってた気がするけど、完全に飛んでたわ。ごめん」

「ふふ、あっちゃんらしい」

「あと親父がなんか、知覚過敏がどうとか言ってた」

「何それ!?」

声が裏返る。

お父さんが昔から、私のことを何かと気にかけてくれているのを思い出す。
なんだか少しだけ、恥ずかしくなった。