「あなたが消したい人の名前を書いてここに入れてください」
そうしゃべる怪しげなポストに、私は迷わず「お父さん」と書いて入れた。
だってひどいもん。お父さんなんか嫌いだもん。
私はさっきまでのことを思い出した。
「お父さんなんか、大嫌い!」
私はそう言って家を飛び出した。
お父さんはいつも勉強勉強うるさい。今度は進路のことでケンカした。
私は、制服がかわいいA高校に行きたいのに、お父さんてば「そんなことで進路を決めるバカがいるか!」って急に怒りだして。三年間毎日着る服のことなんだから、大事なことなのに。
プンプン怒りながら、夕暮れの街を歩く。すると、コンビニの店先から担任の先生が出てきた。
「お、加納じゃないか」
「うわーん、先生ー」
私は先生に泣きついた。担任の松沢先生はイケメンで優しい。男女問わず生徒にも保護者にも人気がある。そこで先生にお父さんの愚痴を聞いてもらったが、怒りはおさまらなかったのだ。
「おい! 香菜!」
振り返ると息を切らしたお父さんが立っていた。私は怒られると身構えた。けれど、お父さんは私に頭を下げた。
「ごめん。香菜の言い分も聞くべきだった」
私が目を丸くしていると、お父さんは続けた。
「でも、制服よりも大事なことも色々あるんだ。これは香菜のことを思って言ってるんだ。信じて欲しい」
私は急に自分が恥ずかしくなってきた。
「私も、お父さんの言い分聞かなくてごめんなさい」
「よし、じゃあ仲直りだ。うちに帰ってゆっくり話そうな」
「うん!」
そうして、二人で家に帰ろうとした。
「あ!」
「どうした?」
私は慌てて首をふると「先に帰ってて」と言い残してポストにかけ戻った。
「返して! 紙返して! 消さないで!」
ポストは「もう無理だよ」と答えた。
「ひどいお父さんは消えたよ。残ったのは優しいお父さん」
そうだったのか! だからお父さんが急に優しくなったんだ。ポストさんありがとう!
私は優しいお父さんの元へと戻った。
お父さんと家に帰る途中、交通事故を見かけた。
タンカーで運ばれていた人は、松沢先生に似ていた。
解説
消えた「ひどいお父さん」とは、誰のことだったのか……。
そうしゃべる怪しげなポストに、私は迷わず「お父さん」と書いて入れた。
だってひどいもん。お父さんなんか嫌いだもん。
私はさっきまでのことを思い出した。
「お父さんなんか、大嫌い!」
私はそう言って家を飛び出した。
お父さんはいつも勉強勉強うるさい。今度は進路のことでケンカした。
私は、制服がかわいいA高校に行きたいのに、お父さんてば「そんなことで進路を決めるバカがいるか!」って急に怒りだして。三年間毎日着る服のことなんだから、大事なことなのに。
プンプン怒りながら、夕暮れの街を歩く。すると、コンビニの店先から担任の先生が出てきた。
「お、加納じゃないか」
「うわーん、先生ー」
私は先生に泣きついた。担任の松沢先生はイケメンで優しい。男女問わず生徒にも保護者にも人気がある。そこで先生にお父さんの愚痴を聞いてもらったが、怒りはおさまらなかったのだ。
「おい! 香菜!」
振り返ると息を切らしたお父さんが立っていた。私は怒られると身構えた。けれど、お父さんは私に頭を下げた。
「ごめん。香菜の言い分も聞くべきだった」
私が目を丸くしていると、お父さんは続けた。
「でも、制服よりも大事なことも色々あるんだ。これは香菜のことを思って言ってるんだ。信じて欲しい」
私は急に自分が恥ずかしくなってきた。
「私も、お父さんの言い分聞かなくてごめんなさい」
「よし、じゃあ仲直りだ。うちに帰ってゆっくり話そうな」
「うん!」
そうして、二人で家に帰ろうとした。
「あ!」
「どうした?」
私は慌てて首をふると「先に帰ってて」と言い残してポストにかけ戻った。
「返して! 紙返して! 消さないで!」
ポストは「もう無理だよ」と答えた。
「ひどいお父さんは消えたよ。残ったのは優しいお父さん」
そうだったのか! だからお父さんが急に優しくなったんだ。ポストさんありがとう!
私は優しいお父さんの元へと戻った。
お父さんと家に帰る途中、交通事故を見かけた。
タンカーで運ばれていた人は、松沢先生に似ていた。
解説
消えた「ひどいお父さん」とは、誰のことだったのか……。

