「はあ? さっきの理論どこいったの」
「だって」
一拍。
「藤本さん、求めてないでしょ」
図書室の空気が、不自然に静止する。
「なにそれ」
「試してるだけ」
低い声。
壁の時計が、一度、硬質な音を立てて時を刻む。
「考察きも」
でも、目は逸らさない。
速水も、逸らさない。
数秒。
先に視線を外したのは、私だった。
「……求めてるかもしれないじゃん」
吐き出した瞬間、自分の声がひどく空疎に響いた。
「嘘」
即答だった。
「なんで?」
「鋳造されたみたいな顔してる」
静謐な断定。
私は、さらに深く笑ってみせる。
「え、ひど!」
同じ温度。
決して揺れない黒。
私は椅子を引き、立ち上がった。
「つまんないこと言わないでよー」
鞄を肩にかけ、出口へと歩き出す。
返事はない。
けれど、指先がドアの金具の冷たさを拾ったそのとき。
「藤本さん」
背後から、名前を呼ばれた。
振り向くと、速水は本を開いたまま、真っ直ぐにこちらを見ていた。
「藤本さんって人形みたいだよね」
一瞬の空白。
「綺麗で、自我がない」
静かだった。
拒絶でも、否定でもない。ただ逃れようのない事実を、そこに置くような響き。
私は笑う。いつもの角度、いつもの表情で。
「なにそれ」
軽い声。
軽い顔。
速水は否定しなかった。
「藤本さん」
低い声が、図書室の冷えた空気に溶け込んでいく。
「人ってもっと醜いものだと思わない?」
喉の奥が、一瞬だけつかえた。
「は?」
速水は頬杖をついてじっと私をみあげている。
「なに、遠回しに私のこと綺麗って褒めてくれてる?シャイだね、速水くん」
「そうだね?」
私は逃げるように背を向け、ドアを掴む。
金具の冷たさが、手のひらにじっとりと残った。
廊下の生ぬるい感触。
肺の奥に溜まっていた空気を、一気に吐き出した。
「だって」
一拍。
「藤本さん、求めてないでしょ」
図書室の空気が、不自然に静止する。
「なにそれ」
「試してるだけ」
低い声。
壁の時計が、一度、硬質な音を立てて時を刻む。
「考察きも」
でも、目は逸らさない。
速水も、逸らさない。
数秒。
先に視線を外したのは、私だった。
「……求めてるかもしれないじゃん」
吐き出した瞬間、自分の声がひどく空疎に響いた。
「嘘」
即答だった。
「なんで?」
「鋳造されたみたいな顔してる」
静謐な断定。
私は、さらに深く笑ってみせる。
「え、ひど!」
同じ温度。
決して揺れない黒。
私は椅子を引き、立ち上がった。
「つまんないこと言わないでよー」
鞄を肩にかけ、出口へと歩き出す。
返事はない。
けれど、指先がドアの金具の冷たさを拾ったそのとき。
「藤本さん」
背後から、名前を呼ばれた。
振り向くと、速水は本を開いたまま、真っ直ぐにこちらを見ていた。
「藤本さんって人形みたいだよね」
一瞬の空白。
「綺麗で、自我がない」
静かだった。
拒絶でも、否定でもない。ただ逃れようのない事実を、そこに置くような響き。
私は笑う。いつもの角度、いつもの表情で。
「なにそれ」
軽い声。
軽い顔。
速水は否定しなかった。
「藤本さん」
低い声が、図書室の冷えた空気に溶け込んでいく。
「人ってもっと醜いものだと思わない?」
喉の奥が、一瞬だけつかえた。
「は?」
速水は頬杖をついてじっと私をみあげている。
「なに、遠回しに私のこと綺麗って褒めてくれてる?シャイだね、速水くん」
「そうだね?」
私は逃げるように背を向け、ドアを掴む。
金具の冷たさが、手のひらにじっとりと残った。
廊下の生ぬるい感触。
肺の奥に溜まっていた空気を、一気に吐き出した。
