君と僕のすれ違い日記

 次の日
 朝から一番会いたくない人に会った。
 …元カレの瑛人。ウキウキした気持ちで駅に向かったのに、改札の前に瑛人がいた。
 正直、顔なんて見たくもないし、声も見たくない。
 改札の前のベンチに座った瑛人は、私の姿に気づいてはいなかった。
 逃げるように改札を通り、電車を待つ。少しすると電車が来た。
 亮介が乗っているという3号車に乗り、亮介と合流する。
 ドアが閉まる直前に、瑛人が乗ってきた。よりによってどうして同じ車両に乗るのか。
「ねえ、亮介。あれ。」
 そう言って、私はこっそり瑛人を指差す。
 亮介は気づいたような顔をして、
「もしかして、元カレの人?」
 私はコクっと頷く。
「じゃあ他の車両移動しよ。」
 亮介は私の手を引いて、2車両目に移動する。
 その時、前に瑛人と手を繋いでいた女の子とすれ違った。
 あぁ、まだ付き合ってるんだ。2人のやり取りなんて見たくない。私は後ろなんか振り返らずに前の車両に行った。

 電車の中では沈黙が続いた。
 私がぼーっとしていたから、話しかけるのを躊躇ったんだと思う。
 あんなにも最低な元カレを見て、私はショックになったのかな。
 どうしてか分からないけど頭が働かない。忘れたいのに、忘れられない。
 イライラして、亮介に当たったらどうしよう。気をつけないと。
 いつの間にか、電車が目的地に着いた。結局、電車の中で何も話していなかった。
 大切なクリスマスの日なのに、なんだか申し訳ない。
 人の波に流れ、私たちも電車を降りる。周りを見ると、楽しそうに笑って、話しているカップルがいた。私たちだって仲良いし、不思議な対抗感が生まれ、少しだけ気分が良くなった。
「ごめんね、電車で無言で。」
 急に話し出した私に驚いたのか、びっくりしたと言いながら亮介言った。
「ううん、詩央里こそ朝から嫌な思いしたでしょ。ゆっくり気持ち落ち着かせたらいいから。落ち着いたら、いつも通り楽しく話せば良いし。」
 そう言って、私の手を取る。温かくて優しい手。いつ繋いでも落ち着く、そんな気がする。
「ありがとっ。私はもう大丈夫だから、いつも通り楽しもっ。ほら早く行こ。」
 私は亮介の手を引っ張り、人混みをすり抜ける。
 もう、私は本調子に戻ったはず。

 海遊館の中はいつもよりも、人が多かった。
 エスカレーターを上がると、もう世界は青色に染まっていた。
 エイが泳いで、イルカが跳ねて、土の中をチンアナゴが泳ぐ。あまり見れない深海魚のクリオネだっている。
「ほんと綺麗...。」
 思わず声が出る。隣で亮介が微笑む。
 幸せな時間だ。