アオハル☆ベースボール

「ってことで、このトマトももーらいっ」

「こらっ、亜季! まだ自分のがあるでしょ⁉」

 亜季のお皿に残っていたトマトを奪い返すと、そのまま口の中へと放り込む。


 ……でもね、亜季。

 亜季はそれでよくても、わたしまでそんなふうにワガママだったら、お母さん困っちゃうでしょ?


 最近までお兄ちゃんが座っていた、わたしの向かいの席をちらっと見る。

 お兄ちゃんも今はいないんだから、わたしがもっとしっかりしなくちゃいけないの。


 わたしのお兄ちゃんは、この四月に野球部専用の寮のある高校に入学して、今は家にいないんだ。

 この家で野球の話ができるのは、お兄ちゃんだけだった。

 野球中継を見ながら、ルールだけじゃなく、打席での球の捉え方や、守備の際のポジショニングのコツまで、今までいろいろ教えてくれた。

 技術だけじゃなく、知識も豊富なお兄ちゃんは、ずっとわたしのあこがれなんだ。


 普段はそんなに感じないんだけど、ぽっかり空いたお兄ちゃんの席を見ると、無性に寂しくなるときがあるんだよね。

 お父さんが単身赴任になったときもそうだったけど、お兄ちゃんがいないことにも、少しずつ慣れていかなくちゃ。