野球、やりませんか⁉

「あー、あった、あった。これこれ。数学の問題集」

 机の中から引っ張り出すと、わたしに向かってひらひらと振って見せる。


「今日、たしか宿題が出てたよね」

「そ。なのに、カバンに入れるの忘れててさ。ってことで、俺の用は終わったから。棚橋、それ半分ちょーだい」

「え?」

「自己紹介カードの掲示。半分ずつやれば、早く終わるし」

 わたしのところへすたすたと戻ってくると、有沢くんが右手を差しだす。


「大丈夫だよ、わたし一人で。有沢くんは、試合に向けて練習しなきゃだし。早くアップに行って」

「マネージャーも部員の一人でしょ? ほら、早く終わらせて部活行くよ」

「え、でも……」

「ん!」

 有沢くんが、さらにぐいっと手を近づけてくる。


「うん……じゃあ……ありがとう。お願いします」

 お礼を言いながら、カードを半分くらい有沢くんに渡す。


「よしっ。やるかあ!」

 さっそく掲示板の前に立つと、ぺぺぺぺっと超高速で貼っていく有沢くん。


「ち、ちょっと待って、有沢くん。めちゃくちゃゆがんでるよ⁉」

「こんなの、貼ってあればどーでもよくない? どうせ誰も見ないんだし」