野球、やりませんか⁉

「さっそくだが、ピッチングを見せてくれ」

 道具の準備とアップを終えると、渡瀬くんと有沢くんがグラウンドの隅でピッチング練習を始めた。


「そんじゃ、とりあえず軽くいきまーす」


 キャッチャーミットを見据えた瞬間、有沢くんの顔つきが唐突にピリッと引き締まる。

 視線が貼り付いてしまったかのように、その有沢くんの真剣な表情から目がそらせない。


 ……あれっ。そういえばあの顔、どこかで見たことがあるような……。

 うーん、いつだろう……。

 ま、もし対戦したことがあったとしても、さすがに有沢くんは覚えていないよね。

 わたしみたいな、目立たない地味な選手のことなんて。


 パンッ!


 キャッチャーミットが、いい音を立てる。


「ナイスボール!」

 渡瀬くんが、有沢くんにボールを投げ返す。


「ははっ。超気持ちいー」

 そのボールをパシッとキャッチしながら、有沢くんが楽しそうに笑う。


 そのまま何球か投げたあと。


「じゃあ、そろそろもうちょい本気でいっていーっすかー?」


 バンッ!


 さっきまでよりも、ずっと重い音がする。


 ……ほらね。あんなボール、わたしに打てるわけがない。

 中学生男子なんて、これからどんどん体が大きくなって、球速だって、スイングだって、どんどん成長していくんだから。

 女子のわたしがついていくことなんてできないんだよ。