野球、やりませんか⁉

 口調は柔らかいのに、なんだか有無を言わせない空気を漂わせる有沢くん。

 わたしが言われてるわけじゃないのに、背筋がぞくりとする。


「お、俺らだってヒマじゃねーわ!」

「問題起こして俺らの足だけは引っ張んなよ。わかったな!」

「はいはーい、わかりましたー」

 ニコニコと手を振りながら、有沢くんが先輩たちを見送っている。


 ……あ~ビックリした。一瞬大希くんがいるのかと思っちゃったよ。


 他の人たちも、いつもの有沢くんとのギャップに驚いたのか、みんな固まってる。


 そっか。ひょっとして、有沢くん……。


「ほらほら、みんななにぼーっとしてんの? さっさと準備始めるよー」

 有沢くんがいつもののんびりとした口調で言って、へらりと笑う。


 うん。間違いなくこっちがわたしたちの知ってる有沢くんだ。


 ひょっとして、有沢くんがいつもへらへら笑ってるのって、『大希くん』と自分は違うんだっていう、有沢くんなりの主張……?


 っていうのは、さすがにわたしの考えすぎかなあ。


「うおっ、すげっ。このバット、めっちゃいいヤツじゃん」

 八柳くんが、床に転がっていたバットを拾いあげ、砂を払いながら感嘆の声をあげる。


 砂まみれにされていた道具はどれも新品で、しかもかなり高価なものばかり。

 本当に野球部復活の準備は万端だったんだなってことが、この体育倉庫内を一目見ただけでわかる。


 ここまで準備しておいて白紙に戻すだなんて、道具たちもかわいそうすぎるよ。