野球、やりませんか⁉

 ちょっと⁉ お願いだからこれ以上先輩たちをあおるようなことを言わないで!


「なんだと⁉」

「まあまあ。大会が近いのに、暴力事件はマズいから」

 茶髪の先輩が、殴りかかりそうな勢いの短髪の先輩の肩を押さえながら、ちらりと有沢くんを見る。


 一瞬ハッとした表情をした有沢くんが、ぎゅっとくちびるをかむ。


「君たち、ウワサによると、どこのチームにも入れないようなヤツらの集まりなんだって? ここじゃないと野球ができないのに、もうすぐ解散だなんて、かわいそうで見てられないよ。ムダな練習なんか、もうやめたら?」

「だな。おまえらのグラウンドは、ムダにならないように俺らがキッチリ使ってやるから安心しな」


 ……ひどい。わざわざそんな言い方しなくてもいいのに。


 たしかにみんな、一時はいろんな理由で野球はもうやめようって思っていたかもしれない。

 けど、竜崎監督に熱心に誘われて、もう一度やろうって決心してここに集まった仲間なんだ。

 その気持ちを踏みにじるような言い方、しないで。


 一歩足を踏み出し文句を言おうとした瞬間、誰かがわたしの肩に手を置いた。

 有沢くんだ。

 横顔をそっと見あげると、その目はわたしじゃなく先輩たちの方をじっと見つめていた。


「先輩方、後輩いじってるヒマがあったら、早く練習した方がいいんじゃないですか? 本気で全国行くつもりないなら、別にいいですけど。でも、俺らもいつまでも先輩方の相手をしてられるほどヒマじゃないんで、そろそろお引き取りくださると助かるんですけど」