野球、やりませんか⁉

 翌日の放課後、体操服に着替えると、わたしはそっこーで野球部専用グラウンドへと向かった。


 誰もいないグラウンドの入り口に立って、ぐるりと見渡す。


 グラウンドの外にボールが飛び出さないよう張りめぐらされた防球ネットに、黒土の内野。


 今日からついに、野球部の活動が始まるんだ。

 こんなところで絶対に終わらせたりしない。

 これからみんなでいっぱい練習して、いっぱい試合に出るんだから。

 そして、いつかは全国の舞台にだって……。


「絶対勝つぞーっ‼」

 誰もいないのをいいことに、グラウンドに向かって大声を張りあげる。


 ……え、あれっ?


 入り口から一番遠いところで、なにかが動いたような気がする。

 ひょっとして、誰かいる?


 小さく見えていた人影が、どんどんこっちに近づいてくる。


「あ、有沢くん⁉ 早いね。もう来てたんだ」

 必死に平静を装って有沢くんに声をかける。


 誰もいないと思ってたのに。

 さっきの大声、がっつり聞かれちゃったよね⁉


「練習前にちょっと走っとこうと思ってさ。しばらく練習サボってたせいで途中で体力切れ、なんて言い訳できないしねー」

 そう言ってへらりと笑う有沢くんは、いつもの有沢くんで、なんだかホッとする。