野球、やりませんか⁉

「ところで、対戦相手はもう決まっているのか?」

 渡瀬くんの質問に、こくりとうなずく。


「市大会でベスト4常連の学校だって」

「うっわ、マジかよ」

「いきなりそんなとことやんのか、俺ら」

 みんなの間に一気に動揺が広がる。


 そんな中、渡瀬くんだけは、さっきまでと変わらぬ様子でもう一度わたしにたずねてきた。


「具体的な学校名は?」

「えーっと、たしか、月……なんとか中だったと思う」

「月? なるほど、月瀬中か。たしかに、なかなかの強豪だな」

 渡瀬くんがあごに手を当て、小さくため息をつく。


「エースは左のスリークォーター。目立った強打者はいないが、チャンスを確実に得点につなげ、最少失点に抑えて勝つ、典型的な守りの野球のチーム。この強固な守りをどう崩すかが勝負のカギとなりそうだな」

 渡瀬くんが、ぶつぶつとつぶやいている。


 渡瀬くん、ひょっとしてもう全部の中学の情報が頭の中にインプットされてる……?


「ま、全国行くにはそのうち倒さなきゃいけない相手なわけだし。なんとかするしかないんじゃない?」

「そうだな。こんなところで負けているようでは、全国制覇など夢のまた夢だからな」


 そんなやりとりをする二人を見て、八柳くんがぷはっと吹きだした。