野球、やりませんか⁉

「竜崎監督の誘いを断って、別の学校に行ってしまった可能性が高いということか」

「ま、ここに来なくても、他でやれてるならいーけどね」

「そ、そうだね」

 平静を装ってそう答えながらも、心臓の鼓動が加速する。


 わたし、ちゃんと言ったよ? 『小学校までで、野球はやめます』って。

 竜崎監督、他のセカンドの子、ちゃんと探してくれたんだよね?

『君のことを待ってるよ』って最後まで言われたけど、そんなのは社交辞令……だよね?


「竜崎監督にスカウトされたメンツではないが、一応セカンドができそうな野球経験者に声はかけてある。小四までチームでやっていたらしい。どのくらいできるかは、試してみないとわからんがな」

「そ、そうだったんだ! ありがとう、渡瀬くん」

 明るくお礼を言いながらも、なんだか胸の中がモヤッとする。


 ……いやいや、ここは喜ぶべきところでしょ?

 だって、もしできる人が見つからなかったら、月末の試合すらできずに終わっちゃうところだったんだか――――‼。


 や、ヤバい。あのこと、まだ有沢くんにしか言ってなかった。


「いや、礼を言うのは僕の方だ。棚橋がいなければ、間違いなくあのまま野球はやめていた。が、いざまたやれるとなると、楽しみで仕方ない。自分がまだ野球に未練があったのだと、今回のことで思い知らされたよ。これから、末永くよろしく頼む」

 渡瀬くんが、笑みを浮かべてわたしに右手を差しだしている。


「う、うん、こちらこそだよ。あはははは」

 わたしも右手を差しだしながら、引きつった笑みを浮かべる。