今日から野球部はじめますっ!

 なにそれ。やっぱり有沢くんはなんにも悪くないじゃん。


「だったら――」

「いや、棚橋の言いたいことはわかるが、想像してみてくれ。有沢になにかあるたびに、弟がそうやって出しゃばってくるとしたら? そんな厄介者が同じチーム内にいるというのは、リスクが高すぎる」

「そ、それは……」


 そうかもだけど。

 でも、有沢くんはなんにも悪くないんだよ?

 なのに、有沢くんは誰とも野球ができないの?

 そんなの……。


「とにかくだ。前にも言ったが、僕は元々野球は小学校まででやめるつもりでいた。その気持ちに変わりはない。申し訳ないが、これ以上は勘弁してくれ」

 そう言うと、渡瀬くんは目を伏せ、わたしの横を通りすぎていく。


「ねえ! 本当に少しもやりたくないの?」

 渡瀬くんの背中に声をかけると、足が一瞬止まる。


「本当はやりたいんだよね? だからこの学校に来たんでしょ⁉」

 だけど返事が返ってくることはなく、渡瀬くんはそのまま立ち去ってしまった。


 絶対……やりたいんでしょ?

 なのに、なんでそう言ってくれないの?


 ……みんなは、わたしとは違うのに。


 渡瀬くんの背中を見つめたまま、わたしはぎゅっと両手を握りしめた。