今日から野球部はじめますっ!

「俺がいないってわかったら、入ってくれるヤツも何人かはいるんじゃない? それでいーじゃん。俺なんかいない方が、みんなのためなんだって」

 有沢くんは、相変わらずへらへら笑ったまま。


 けどね。しばらく一緒にいるうちに、気づいちゃったんだ。

 その笑いの奥に、なにかを隠してるんじゃないかって。


 これはきっと有沢くんの本心なんかじゃない。

 だとしたら、絶対にこのままにはしたくないよ。


「お願い。理由をちゃんと教えて」

「聞いてどーすんの?」

「それは……聞いてから考える」

 相変わらずへらへら笑っていた有沢くんが、ふっと真顔に戻ると、小さくため息をつく。


「俺の双子の弟が暴力事件を起こしたから。みんなが俺と野球をやりたくない理由はそれ。小学校んときのチームにもいられなくなって途中でやめた。これで満足?」

 そう言うと、へらりといつもの調子で笑い、くるりときびすを返して行ってしまった。


「え、有沢く……」

 無言の背中に強い拒絶の意思を感じて、わたしは途中で言葉を飲みこんだ。


 有沢くんの双子の弟が暴力事件を起こしたから?

 そのせいで有沢くんがチームにいられなくなったって、どういうこと?


 聞きたいことはたくさんあるのに、これ以上入ってくるなと、まるでバリアを張られてしまったみたい。


 小さくなっていく有沢くんの背中を追いかけることもできず、わたしはその場に立ちつくした。