野球、やりませんか⁉

 うしろを振り返ると、有沢くんが顔をうつむかせて立ち止まっていた。


「有沢くん……?」

「俺にはあんなこと言っといて、自分はなんなわけ?」

 有沢くんが低い声で言う。


「棚橋のこと、俺は野球部の大事な仲間だって思ってんだけど。違うの?」

 顔をあげた有沢くんが、わたしの目をじっと見つめてくる。


「小学校までで野球はやめようと思ってたけど、竜崎監督にスカウトされて、諦めきれなくてここに来たんでしょ?」

「わ、わたしは元々ここで野球部のマネージャーをしようと思って――」

「でも、他の学校は選ばなかった」

「……」


 そう、だよね。その選択肢もあったはずなのに、わたしはここに来た。

 どうしてだろう。


「俺も棚橋のこと、ちゃんと見てるから。もしもこの先、棚橋が本当にムリだって思うときが来たら、そんときは俺、また一緒に考えるから。だからさ、最初から逃げんなよ。とりあえずなんも考えないで、野球やればいーじゃん。だってさ、好きなんでしょ、野球」

「それ、わたしが有沢くんに言ったセリフ」

 思わず泣き笑いするわたし。