野球、やりませんか⁉

「やべっ。生ける伝説ってヤツ?」

「ガチで全国制覇も夢じゃなくね?」

 事情を知ったみんなが、猪尾先生に期待の眼差しを向ける。


「指導はしなくてもいいという条件で、棚橋さんに顧問を頼まれたんですけどね」

 困ったような表情の猪尾先生に見つめられ、あたふたするわたし。


「でもそれは、猪尾先生がまさか昔野球部の監督をなさっていたなんて知らなかったからで……撤回させてください! 先生、お願いします。わたしたちの指導をしてください」

「猪尾先生。僕からもお願いします。最終回、僕には盗塁のサインは出せませんでした。でも猪尾先生が、自分が全責任を負うからと。そう言ってくれたおかげで、僕たちは勝てました」


 やっぱり! あの盗塁は、猪尾先生の指示だったんだ。


「先生、頼むよ~」

「猪尾先生、お願いします」

 みんなが口々に言う。


「わたしたちが勝つには、監督がどうしても必要なんです。お願いします!」

「困りましたねえ。もう野球部の監督をするつもりはなかったのですが……」

 猪尾先生が、すごく困った顔をしている。


 そもそも猪尾先生は、どうして野球部の監督をやめてしまったんだろう?

 そんなに優秀な監督なら、学校としても放っておかないはずなのに。


 あ……。


 そのとき、ひとつの可能性に思い当たった。