野球、やりませんか⁉

「竜崎先生。よかったら、あの子たちと一度話を――」

「いえ。理事長の意向とはいえ、わたしがあの子たちを裏切ってしまったことには変わりありませんので。今さら言い訳はできませんよ」

 そう言うと、竜崎監督が寂しげな笑みを浮かべる。


「それでは君が悪者のままじゃないか」

「わたしを恨むくらいの方が、きっとあの子たちの原動力になるはずですから。とにかく、猪尾先生が監督を引き受けてくださって、本当によかった。僕が集めた才能ある子たちですので、どうかあの子たちのこと、よろしくお願いいたします」

 猪尾先生に向かって深々と頭を下げると、竜崎監督は自分のチームの方へと戻っていった。


 今の先生たちの会話からすると、竜崎監督の赴任予定を白紙に戻したのも、やっぱり理事長先生だったんだ。

 それに……。


「猪尾先生。ひょっとして、竜崎監督とお知り合いなんですか?」

 わたしがたずねると、猪尾先生が昔を思い出すような遠い目をする。


「ええ。彼は、わたしが野球部の監督をやっていたときの教え子でね」


 ……んん⁇ ちょっと待って。

 竜崎監督が、猪尾先生の教え子ってことはだよ?

 ひょっとして猪尾先生って、あの創部三年で全国制覇を成し遂げたっていう……伝説の監督⁉


「えぇっ、マジかよ。すげーっ!」

 猪尾先生との会話が聞こえていたのか、有沢くんが感嘆の声をあげる。


「おい、みんな早くこっち来いってー!」

 有沢くんがグラウンド整備を始めていたみんなに向かって手招きすると、何事かとぞろぞろ集まってくる。