「はあ⁉ なんだよ、それ‼」
「そんな話、聞いてません」
「野球部ができるから来いって言われて来たんだぞ。どうしてくれんだよ!」
『部活動説明会をはじめる前に――』という軽い前置きのあとに告げられた衝撃の事実に、わたし棚橋羽瑠の頭の中は真っ白。
がたがたっと数人の男子生徒が立ちあがってあげる抗議の声が、遠くに聞こえる。
そんな……ここに来るはずだった野球部の監督、別の中学に行くことになったんだって。
野球部を作るって話も、なくなっちゃったって。
「ふっざけんな」
しぼり出すような声が、背後から聞こえてくる。
ゆるゆるとうしろを振り向くと、同じクラスの有沢悠希くんが、じっと一点を見つめたまま、膝の上に置かれた両手のこぶしをぎゅっと握りしめていた。
有沢くんも、立ちあがって抗議している子たちも、きっとみんな、四月にここ星黎学園中等部に来る予定だった竜崎監督に誘われた人たちに違いない。
『一緒に野球をやろう。日本一を目指そう』って。
なのに、その監督が別の中学に行くことになってしまっただけじゃなく、野球部を作るって話までなくなっちゃったなんて……。
先生の話によると、今年の四月に理事長先生が代わって、新しい部活を作るよりも、今ある部活の強化を優先するよう、学校の方針が変わったみたい。
正確には、昔は野球部もあったみたいなんだけど、ずいぶん前に廃部になったんだって。
それを今回復活させるっていう方向で、話が進んでたみたいなんだけど……。
急に取り消しだなんて、こんなの、あまりにもひどすぎるよ。
野球部に入るつもりでこの学校に来た子たち、これからいったいどうするんだろう。
それにわたしも……どうしたらいいんだろ。



