クールな年下男子と、甘い恋を。

「違うんだってば、成瀬先輩は私の彼氏じゃないの!! 私の彼氏は――」
「深森先輩」
 またも名前を呼ばれて、私は言葉を止めた。

 声の主は誰かなんて考えるまでもない。
 たとえいつもとは違う他人行儀な呼び方だとしても、漣里くんの声を聞き間違えるなんてことはありえない。

「……漣里くん?」
 葵先輩と一緒に歩いて行ったはずなのに、いつの間に引き返してきたのか、漣里くんが傍にいた。

 みーこは敵意を隠そうともせずに漣里くんを睨んだ。
 遠巻きに見ていた生徒たちもみーこと同じような顔をしている。

 ……え。
 私は一変した空気に、思わず身を竦ませた。
 皆が葵先輩を見る目は尊敬と崇拝、それからたっぷりの愛に満ちていたのに。
 漣里くんに向けられているのは戸惑いと、恐怖と、嫌悪。

 漣里くんが学校で腫れ物扱いされていることくらい、知ってはいたはずだった。
 でも、私の認識はまだまだ甘かったらしい。
 だって、知らなかった。
 こんな冷たい空気。
 見知らぬ人たちから嫌悪と軽蔑の目で見られることが、どんなに痛いかなんて。