クールな年下男子と、甘い恋を。

「子どもが頭を撫でられたら喜ぶのは、その感触が優しくて、愛情が伝わるからだと思うの。言葉なんてなくても、手のひらには相手の心に訴える力がある。恋人同士が手を繋ぐのは、相手のことが大好きだから、少しでもその心を伝えたいからでしょう?」
 私は漣里くんの手を握って、その手を見下ろした。

「漣里くんの愛情は、手のひらを通じて、きっともちまるにも伝わってたよ。だからきっと、もちまるも漣里くんのことが好きだったよ。もちまるのリラックスした表情は、誰よりも漣里くんが知ってるんじゃないかな。手のひらの上で眠ることだってあったんでしょう? 安心しきってないと、動物が人の手の上で眠ることなんてない。その事実こそ、もちまるが漣里くんを好きだった証拠だよ」
「…………」
 漣里くんは無言。

「漣里くんがずっと悲しい顔してたら、もちまるは心配しちゃうよ。だから、私はもちまるの分まで漣里くんを幸せにできるように頑張りたい。そうしたら安心して天国に行けるでしょう?」
 顔を上げて微笑む。

 漣里くんはなんともいえない表情をしてから、お墓に向き直った。

「……もちまるは俺に飼われて幸せだったかな」
 漣里くんが呟いた。
 夜に溶けるような、小さな声だった。

「当たり前だよ。漣里くんほど愛情をかけてる人、私は知らない。もちまるは幸せだったよ。それは断言できる」
「……そっか」
 漣里くんはそれから少しの間、沈黙して。
 おもむろに上体を傾け、私の肩の上に自分の頭を乗せた。