クールな年下男子と、甘い恋を。

「そんなことないよ。『大事は小事より起こる』って、ことわざにもあるでしょう? 小さな傷だって化膿したら大変なことになるんだから。私も小学生のとき、足の小さな傷を放置したことがあるの。そしたら凄いことになったんだよ。赤く腫れてね、透明な液体が滲み出てきて、それから膿が……」
「わかった。俺が悪かった」
 詳しく伝えようとすると、漣里くんが私の言葉を遮った。

 グロテスクな話を好んで聞きたいと思う人は、そう多くはないだろう。
 漣里くんも例外じゃなかったらしい。

『体験談を通じてわかってもらおう作戦』は成功だ。

「そうだよ」
 私は大きく頷いて、テーブルの上の救急箱を閉じた。

「自分のことは誰よりも大切にしなきゃダメ。痛いのも苦しいのも、他人はそれを想像して心配することはできても、本当の意味で理解することはできないの。誰も代わってあげられないの。だから、どんな小さな痛みでも、無視するのは絶対にダメ」
 これは身体の怪我に限ったことじゃないよ、と私は言った。

 外から見える傷はわかりやすいから、他人が心配することができる。
 でも、心の傷は誰にも見えない。
 辛くても悲しくても気づけない。
 自分を大切にできるのは自分だけなんだ。

「漣里くんが不幸になったら悲しむ人がいるっていうこと、忘れないで」

「…………」
 漣里くんは呆けたような顔をしている。