クールな年下男子と、甘い恋を。

「……すみません、テンション上げすぎました。いらっしゃいませですお客様」
 私はかしこまって頭を下げた。

「……別にいいけど」
 漣里くんは『別に』というのが口癖のようだ。

「先輩は表情がころころ変わって面白い」
「え」
 呆れられたかと思えば、突然褒められてしまった。

 にこやかに笑ってそう言ってくれたら、私もときめいたりできるんだけど。
 仏頂面でそう言われると反応に困る。

 いや、そもそも面白いっていうのは褒め言葉なの?
 ありがとうっていう返答はおかしいよね?

「……えーと。とりあえず、こっちに来て。座って」
 結局、私はスルーを決め込むことにして、漣里くんをテーブルに案内した。
 テーブルの端に置いてあるメニュー表を手に取り、差し出す。

「漣里くんに助けてもらったことは親も知ってるから。もし漣里くんが来たらご馳走するって決まってたの。だから値段は気にせず、何でも好きなの頼んで……って、あれ? どうしたの、その手」
 メニュー表を受け取った漣里くんの手。

 左手の人差し指に、切ったような傷があった。
 まだ新しい傷だ。