クールな年下男子と、甘い恋を。

「あー、ほんとに怖かった……」
 漣里くんの教室から出るや否や、私は心底から呟いた。
 自身の胸に当てた手から、ドキドキと心臓が騒ぐ音が伝わって来る。

 鏡を見たら、私の顔は血の気が引いて真っ青になってるんじゃないかな。
 一年校舎の廊下では数人が歩いている。

 廊下の隅で震えながら大げさに息をついている私を見て、前を通り過ぎた女子生徒から怪訝そうな顔をされたけれど、体裁を取り繕う余裕もない。

 あの後、漣里くんに「どこに行きたい?」と聞かれて、真っ先に挙げたのは彼のクラスのお化け屋敷。

 漣里くんがせっせと近くのスーパーから段ボールを運んできたことも、下校時間ぎりぎりまでクラスの皆と色塗りや設営をしてたことも知ってるんだもの。

 努力の結果がどうなったのか――彼女としては、お昼の空腹を満たすことより何より、気になるよね? 

 入り口である教室前方の扉の前で入場待ちをしている間に、中からは悲鳴や驚愕の声が聞こえて来た。

 これはよほど怖いか、驚かされる仕掛けがあるに違いないと予想はついた。
 だから、腹をくくったつもりだったんだけど――甘かった。

 蛍光灯を赤や青のカラーセロハンで覆い、窓は暗幕や黒く塗った段ボールで塞いだ教室は、まるで異世界のようだった。
 わずかな光ももらさないよう、徹底されて暗い中。

 通路の脇には不気味な人形が置いてあったり、理科室から出張してきたと思しき人体模型や骨格標本が置いてあったりと、雰囲気たっぷり。
 怖がりな私は、おっかなびっくり、漣里くんの腕にしがみついた状態で進んでいった。
 途中では暗幕の割れ目から飛び出してきたお化け役の男子に驚かされ、悲鳴を上げた。