クールな年下男子と、甘い恋を。

 みーこは昨日、山田くんと別れた。
 何度浮気しようとも鉄拳制裁を加えることで許してきたみーこが本気で別れようとしていることを悟り、焦った山田くんは最終的に泣き落としにかかったらしいが、みーこは未練がましいその態度にとうとうブチ切れ、「だったら最初《ハナ》っから浮気するんじゃねえ、最後だけしおらしく謝りやがって、そんなに女が好きなら一生他の女の尻でも追いかけてろ!!」と怒鳴りつけてやったそうだ。

 みーこが彼氏のことで悩み苦しむ姿を見るのは親友として非常に不本意だったため、別れて大正解だったと思う。
 恋する乙女になってるいまのみーこのほうが、断然楽しそうだもの。

「おお、成瀬、おはよう! 弟が野田の蛮行にすっかり怯えて泣いていると言っていたが、だいぶ元気を取り戻したようだぞ! 数人がかりで捕獲したときなんて、陸揚げされた魚のように活きが良かった!」
「うん、これも皆のおかげだね、ありがとう。これから弟をよろしく頼むよ」
 にこやかな葵先輩の台詞に、ついにつもり積もった憤懣が爆発したらしく、漣里くんは羽交い絞めから力ずくで脱出した。

 葵先輩に詰め寄るや否や、胸倉を掴む。
 あくまで掴んだだけで、そのまま掴み上げなかったのは最後の理性なのだろう。

「いつ俺が怯えて泣いたって? 何がよろしくだ、お前、絶対楽しんでるだろ楽しんでるよな……?」
 さっきまでの状況はやはり相当にストレスだったらしく、葵先輩の胸倉を掴む手はわなわなと震えていた。

「やだなあ漣里、お兄ちゃんをお前呼ばわりした挙句、胸倉を掴むなんて。僕はそんな野蛮な子に育てた覚えはないよ?」
 葵先輩は微笑んだままデコピンして、漣里くんを一歩下がらせた。

「ごめんね、皆。弟はこの通り恥ずかしがり屋で、大げさに守られるのが嫌みたいだから、影でこっそり護衛してあげてくれるかな?」
「いらないって言ってるだろ……」
 漣里くんは額を押さえ、恨みがましい目で兄を睨んだ。