クールな年下男子と、甘い恋を。

 入室したときとは正反対の、穏やかな気持ちで自習室を出る。
 歩き出してすぐに、私たちは前方の階段から降りて来た小金井くんと鉢合わせした。

「無様だな」
 小金井くんは開口一番、吐き捨てた。

「みっともなく顔を腫らして、痣を作って。全く情けない。公衆の面前で醜態を晒して、恥ずかしくなかったのか?」
 軽く首を持ち上げ、眼鏡の奥から漣里くんを見下し、目を細める。

「前は余裕で叩きのめしていたように見えたんだが、どうやら目の錯覚だったようだ。君がそんなに弱いと思わなかったよ」
「先輩が俺のために金を払い続けてたってこと、野田たちに聞いた」
 漣里くんは小金井くんの生意気な態度にも言葉にも構うことなく、淡々と告げた。
 ぴくりと小金井くんの眉が動く。

「何を都合良く勘違いしてるんだか知らないが、あれは保身のためであって――」

「ありがとう」

 演説するように片手を持ち上げた小金井くんの台詞を遮り、漣里くんはお礼の言葉を口にした。

 小金井くんが手を上げたままの、中途半端な格好で止まる。

「私も、あなたに言っておかなきゃいけないことがある」
 小金井くんが止まったその隙に、私も言った。

「屋上で、失礼なこと言ってごめんね」
「……は?」
 小金井くんはさも不愉快そうな顔をした。
 でも、私は漣里くんのように、一切を無視して言葉を重ねた。