クールな年下男子と、甘い恋を。

「……真白、成瀬くんを保健室に連れて行ったら?」
 私と同じく、蚊帳の外にいたみーこが提案してきた。
 この騒ぎに乗じて抜けるのは簡単だけど……。
 ちらりと漣里くんを見る。

「いや。俺のせいでこんなことになってるんだから、最後まで見届ける」
「……って、言ってるから」
「そう」
 みーこが引き下がった一方では葵先輩が歩き出し、言い争っている先生と生徒たちの前に立った。

「みんな、庇ってくれてありがとう」
 透き通った声に、ぴたりと騒ぎが止む。
 その光景は、まるで魔法のようだった。

「でも、いいんだ。僕が暴力を振るった事実は変わらないから……」
 愁いを帯びた、切なげな表情を見せた葵先輩に、多くの女子が心臓を撃ち抜かれたらしい。
 どきーん!! という音がここまで届いたような気がした。
 葵先輩は頬を赤らめ、何も言えなくなった生徒たちを置いて、今度は漣里くんに顔を向けた。

「漣里。この学校にいたら、またこいつらが何かしてくるかもしれない。いまよりもっと酷い目に遭わされるかもしれないから……僕と一緒に転校しようか」
「そんな――」
 悲しげな葵先輩に、私が何か言うよりも早く。

 主に女子たちから成る悲鳴の合唱が鳴り響いた。
 講堂を揺り動かすほどの大音量に、私は亀のように首を竦ませた。
 多くの生徒たちが葵先輩の前に移動する。