クールな年下男子と、甘い恋を。

「お前らを叩きのめすのは簡単だ。でも、俺はもう誰にも暴力を振るわないって、真白と約束した」
 その言葉に、私は茫然とした。

 ……私との約束を守るために、反撃しなかったの?
 こんな――ぼろぼろになっても、ずっと耐え続けてたの?

 漣里くんは野田の目を見据えたまま、私の手を握ってきた。

「人との縁には一生ものと、そうじゃないものがあるって聞いたけど、お前らは後者だ。卒業すれば二度と思い出さない、そんなどうでもいい奴のために、俺は自分の立場を悪くしようとは思わない」
 縁についての話は、私がこの前、彼にしたことだ。
 誰かを殴ったりして、自分の立場を悪くしないでというのも、私が頼んだ――。

「握れば拳、開けば掌、なんてことわざ、お前らは知らないだろ」
 それも――私が夏休みに、漣里くんに語った話。

「俺の手はお前らみたいな馬鹿どもを殴るためじゃなくて、真白と繋ぐためにある。そう決めたんだ」
 誰かが追い付いてきたらしく、ばたばたと背後から複数の足音が近づいてくる。

 でも、私はそんなことどうでも良く、ただ漣里くんに釘付けだった。
 腫れた頬、切れた唇、土で汚れた制服。
 見るからに痛々しい、その姿。

 これだけ痛めつけられてなお、卑劣な不良たちに屈することなく、堂々と言い放つその輝きに圧倒されて、目が離せない。