クールな年下男子と、甘い恋を。

 私は全力で駆けた。
 びっくりした顔で見てくる通りすがりの生徒たちの横を抜け、階段を下り、上履きのまま外へ出て、一直線に講堂の裏手へ向かう。

 講堂の中には生徒がいるらしく、複数の声が聞こえた。
 文化祭では講堂で演劇とダンスを行うはずだ。

 どこかのクラスか、もしくは正式な部活動員がリハーサル練習でもしてるのかもしれない。

 騒がしい講堂の横を通り過ぎ、角を曲がって裏手へ到着する。
 ここはコンクリートの壁とフェンスに囲まれた、狭く、見通しの悪い場所。

 校舎からもそれなりの距離があるため、誰かが偶然ここを訪れる可能性は皆無に等しい。
 講堂に用があろうとも、わざわざ裏手まで回って来る生徒なんていようはずもない。

 そこで私が見たのは、体格のいい野田くんに胸倉をつかみあげられている漣里くんの姿だった。

 近くには加藤くんと上杉くんもいて、にやにや笑っている。
 荒々しい足音を立てて乱入した私に気づいたらしく、漣里くんの目が動いて私を捉えた。

 予期せぬ登場だったのか、その目が軽く見開かれる。
 彼が私に気を取られたその瞬間、野田くん――いや、野田は右手を振り上げ、固く握りしめられた拳で漣里くんを殴った。

 耳を塞ぎたくなるような鈍い音が響いて、漣里くんが吹っ飛び、地面にしりもちをついた。