クールな年下男子と、甘い恋を。

 彼が小さくため息をつく。
 そんな音すらも届くほどの――耳が痛いほどの、静謐。
 漣里くんはいま、何を考えてるんだろう。

 クラスメイトから疎外されて。
 賑やかな喧騒から追い出されて。
 ため息をついた彼の心境はわからない。
 私は彼本人ではないんだから、わかるわけがない。

 でも、私は。

「…………」
 私は、悲しい。
 収まったはずの涙の衝動が、ここにきてぶり返した。

 視界が滲み始める。
 この光景が、彼が独りでいる光景が、堪らなく悲しくて、悔しい――。

「真白?」
 目元を覆った直後、驚いたような声が聞こえた。
 見れば、驚きと困惑の混ざった顔で、漣里くんが立っていた。

 足元には閉じた本。タイトルはヘミングウェイの『老人と海』。
 こんな本も読むのか、と少しだけ意外に思った。