クールな年下男子と、甘い恋を。

 あ、危なかった……ほんとに怖かった。
 ばくばくと跳ね回る心臓が落ち着くまでしばらくかかったけれど、私は深呼吸して無理矢理に気を取り直した。

 校舎をさまようこと三十分、私はついに漣里くんを見つけ出した。
 漣里くんがいたのは一年棟の屋上だった。
 なんのことはない、一年三組の教室を後にしてすぐ階段を上っていれば、そこに彼はいたんだ。

 そうとは知らず、図書室やら空き教室やら、色んなところを回っちゃったよ。

 捜索にかけた三十分の間に太陽は傾き、視界はすっかり秋のオレンジに染まっていた。
 給水塔や鉄柵の影が長く伸びている。

 彼は給水塔の影に隠れるようにして、座って本を広げていた。
 オレンジ色の光に照らされた彼の輪郭はとても美しいけれど、物悲しい。

 校舎の中も外も、文化祭準備に浮かれる生徒たちの笑い声に満ちているのに、ここだけ世界から切り離されたかのように静か。

 給水塔に背中を預け、本に目を落としている漣里くんはまだ、離れて立っている私の存在に気づかない。

 ぱら、とページを戻す音が聞こえた。
 続きを読むのではなく、読み返すための動作。
 目は文字を追っているのに、内容が頭に入ってこない、そんな感じだった。