鴻巣翔流の心霊事件 -学校一のイケメンは霊能者!-

 肌を刺すような寒さに、菜月はぶるっと身体を震わせた。
 ゆっくりと目を開ける。
 辺りは真っ暗であった。
 ぼんやりとした意識の中で視線をさまよわせる。

 ここは、どこ?

 堅い床の上に転がされている。
 起き上がろうとしたが、身体が思うように動かない。
 徐々に意識がはっきりとしてきた。
 何とか起き上がれたが、後頭部の辺りがずきずきと脈打つように痛む。
 頭に手を持っていこうとして、腕があがらないことに気づく。

「何で?」
 両手を背中の後ろで縛られていたのだ。
 ようやく、暗闇に目が慣れ始めてきた。
 どこかの部屋、知らない場所。
 視線を上げると、閉じたカーテンの隙間から街灯の明かりが差し込んでくる。
 さらに目が慣れてくると、部屋の様子も分かるようになった。

 物があちこちに散乱し、荒れている。
 テレビで観たゴミ屋敷のようであった。
 何とか縄を解けないものかと身動ぐと、側で何者かの息づかいを聞く。
 闇が凝る部屋の隅に、誰かがいる気配。

「誰? 誰かいるの?」
 菜月の呼びかけに、その人物がゆっくりとこちらに歩いてくる。
 窓から差し込む明かりがその人物の顔を照らす。
 菜月は、目を見開いた。
「あなたは……!」