鴻巣翔流の心霊事件 -学校一のイケメンは霊能者!-

 暎子と翔流と一緒に学校を出る。
 二人には、トイレでまどかに嫌がらせを受けたことを話した。
 藤白桜花のことも。

 というのも、交差点で事故にあった藤白桜花の霊を、浄霊する手がかりにならないかと思ったからだ。
 おのずと暎子には、翔流が霊能者であることは知られた。

 最初は驚いた暎子だが、わりとすんなり受け入れたようだ。
 もっと否定的な態度をとるかと思ったが、驚いたことに、学年一の秀才である暎子は心霊マニアでもあったのだ。
 おかげで、専門的な用語が翔流の口から飛び出しても、いちいち話の腰を折ることなく受け入れてくれた。

「あ……」
 ちょうど、例の交差点にやってきたところで、菜月は声を上げ立ち止まった。
 今日も藤白さんが事故った場所に、不審者が座り込んでいる。
 特に何をするわけでもなくぼんやりとした顔だ。
 目もどこか虚ろである。
 何か悪さをしかけてくることはないとはいえ、やっぱり気持ち悪い。
 菜月はそちらを見ないようにする。

「どうしたの、菜月?」
 一緒に歩いていた暎子と翔流も立ち止まる。
「そういえば私、山城さんのスマホを返すの忘れてた」
 先生に渡すつもりだったが、すっかり忘れていた。

「さっき言ってたまどかのスマホね」
 菜月は来た道を振り返る。
「学校に戻って山城さんに届けてくる」
 それを聞いた暎子が呆れた顔をする。

「あんなひどいことされたのに、菜月ってばお人好しすぎ」
 暎子の言うことはもっともだ。
 だけど、仕方がない。
 これは性分だ。

「でも、スマホがないと困るだろうから」
 やれやれと、暎子は肩をすくめる。
 翔流も何も言わないが、暎子と同様の表情を浮かべている。
「あたしなら、そのへんに捨てちゃうけどね」
 暎子の言葉に菜月は笑った。

 そうしたいのはやまやまだが、そうはいかない。
「わかった。そのスマホはあたしが届けるよ」
「暎子が?」
「だから菜月はまっすぐ家に帰ってはやくお風呂に入ること。それから、ホットココアを飲んで身体を温める。ご飯を食べて、今日ははやく寝る。ということで、菜月を送るのは、鴻巣くんの役目ね」
「ああ」

「ありがとう暎子。実をいうと本当は助かる」
「ふふ、任せなさい。そして、あたしを頼りなさい」
 まどかのスマホを暎子に渡そうとしたその時、そのスマホが鳴った。

 びくりと菜月は肩を撥ね、どうしようかと暎子と翔流の顔を交互に見る。
「もしかしたら、本人がなくしたことに気づいてかけてきたのかも」
 その可能性はありそうだ。
 菜月はおそるおそる電話にでる。
「はい、山城まどかのスマホです――」