もしかしたら、これだけでは終わらないかもしれない。
翔流の言った言葉は本当となった。
小山佳珠子の事件があった翌日から、菜月は体調を崩し学校を休むようになった。
リビングのソファに座り、ぼんやりとテレビを観ながら自習をする。
右肩のあたりが重く痛み、何度も手でもむ。
学校を休んでから今日で二日目。
ありがたいことに、授業のノートは毎日、親友の瑛子が届けてくれた。
学年一の秀才のノートだ。
要領よくまとめられ、分かりやすくて見やすい。
おまけに字がきれいだ。
もしかしたら、次のテストは良い点をとれるかも。
などと冗談めいたことを考え、菜月は右肩をぐるぐると回した。
これって肩こり? やだなあ、中学生なのに肩こりなんて。
おまけに頭痛までする。
菜月はローテーブルの上に突っ伏した。
体調が悪いといっても、寝込むほどではない。
だから学校には行くつもりでいたのだが、征樹に無理をするなと言われ自宅療養しているのだが。
「やっぱり家にいるのはたいくつ」
はあ、と息をつき、紅茶のおかわりをしようと立ち上がったその時、玄関のチャイムが鳴った。
「瑛子かな」
時計を見ると、いつも瑛子がノートを届けに来てくれる時間だ。
「はーい、今開けるねー」
玄関に走り扉を開ける。
「いつもありがと、う……?」
驚きに声をつまらせた。
玄関の前に立っていたのは暎子ではなく、翔流だった。
「心配だから様子を見にきた」
「ありがとう……」
「それと、これ」
翔流はコピー用紙を差し出してきた。
「今日の授業のコピー。深水さんからあずかった」
翔流から暎子のノートのコピーを受けとる。
玄関先で互いに顔を見合わせ、しばしの沈黙。
どうやら、翔流は何か言いたそうな顔をしている。
わりとはっきり言いたいことを言う翔流が、こんな風にためらうのは珍しい。
もっとも、親しくなってまだ日が浅い。
翔流のことをそれほどよく知っているわけではないが。
「ええと、翔流くんって、甘いもの好き?」
「好き」
「クッキー焼いたの。食べてく?」
「食べる」
遠慮しないところをみると、やはり話があるようだ。
それに、一瞬だが翔流の目がきらっと輝いた気がした。
甘いものが好きなんだ。
意外かも。
「私、お菓子作りが得意なの。あがって」
じゃあ、と言って翔流は家にあがった。
そのままリビングに通し、ソファに座るようすすめる。
「オレンジジュースでいい?」
「ありがとう」
菜月は高い場所にある棚からグラスを取ろうと手を伸ばし、背伸びをする。
その瞬間、めまいがした。
目の前が真っ白になり、意識が飛ぶ。
倒れそうになった菜月を咄嗟に背後から翔流が支えた。
「おい、だいじょうぶか!」
「うん……」
と、声をもらす菜月を見た翔流は、眉をひそめる。
「だいぶ調子がよくなったかなって思ったけど、時々こうしてめまいがするの。それに、気分が悪くなったり」
翔流に支えられ、菜月はソファに座った。
さっきまでは何でもなかったのに、今は起き上がるのもつらい。
「そのまま、横になれ」
「でも、眠るのがちょっと怖い。眠ると金縛りにかかったみたいに身体が動かなくなる時があるの」
翔流は真剣な顔で菜月を見下ろす。
「菜月、今から話すことを真面目に聞いてくれるか」
菜月はごくりと唾を飲み込んだ。
そんな意味深な言い方で前置きをされたら、身がまえてしまう。
翔流の言った言葉は本当となった。
小山佳珠子の事件があった翌日から、菜月は体調を崩し学校を休むようになった。
リビングのソファに座り、ぼんやりとテレビを観ながら自習をする。
右肩のあたりが重く痛み、何度も手でもむ。
学校を休んでから今日で二日目。
ありがたいことに、授業のノートは毎日、親友の瑛子が届けてくれた。
学年一の秀才のノートだ。
要領よくまとめられ、分かりやすくて見やすい。
おまけに字がきれいだ。
もしかしたら、次のテストは良い点をとれるかも。
などと冗談めいたことを考え、菜月は右肩をぐるぐると回した。
これって肩こり? やだなあ、中学生なのに肩こりなんて。
おまけに頭痛までする。
菜月はローテーブルの上に突っ伏した。
体調が悪いといっても、寝込むほどではない。
だから学校には行くつもりでいたのだが、征樹に無理をするなと言われ自宅療養しているのだが。
「やっぱり家にいるのはたいくつ」
はあ、と息をつき、紅茶のおかわりをしようと立ち上がったその時、玄関のチャイムが鳴った。
「瑛子かな」
時計を見ると、いつも瑛子がノートを届けに来てくれる時間だ。
「はーい、今開けるねー」
玄関に走り扉を開ける。
「いつもありがと、う……?」
驚きに声をつまらせた。
玄関の前に立っていたのは暎子ではなく、翔流だった。
「心配だから様子を見にきた」
「ありがとう……」
「それと、これ」
翔流はコピー用紙を差し出してきた。
「今日の授業のコピー。深水さんからあずかった」
翔流から暎子のノートのコピーを受けとる。
玄関先で互いに顔を見合わせ、しばしの沈黙。
どうやら、翔流は何か言いたそうな顔をしている。
わりとはっきり言いたいことを言う翔流が、こんな風にためらうのは珍しい。
もっとも、親しくなってまだ日が浅い。
翔流のことをそれほどよく知っているわけではないが。
「ええと、翔流くんって、甘いもの好き?」
「好き」
「クッキー焼いたの。食べてく?」
「食べる」
遠慮しないところをみると、やはり話があるようだ。
それに、一瞬だが翔流の目がきらっと輝いた気がした。
甘いものが好きなんだ。
意外かも。
「私、お菓子作りが得意なの。あがって」
じゃあ、と言って翔流は家にあがった。
そのままリビングに通し、ソファに座るようすすめる。
「オレンジジュースでいい?」
「ありがとう」
菜月は高い場所にある棚からグラスを取ろうと手を伸ばし、背伸びをする。
その瞬間、めまいがした。
目の前が真っ白になり、意識が飛ぶ。
倒れそうになった菜月を咄嗟に背後から翔流が支えた。
「おい、だいじょうぶか!」
「うん……」
と、声をもらす菜月を見た翔流は、眉をひそめる。
「だいぶ調子がよくなったかなって思ったけど、時々こうしてめまいがするの。それに、気分が悪くなったり」
翔流に支えられ、菜月はソファに座った。
さっきまでは何でもなかったのに、今は起き上がるのもつらい。
「そのまま、横になれ」
「でも、眠るのがちょっと怖い。眠ると金縛りにかかったみたいに身体が動かなくなる時があるの」
翔流は真剣な顔で菜月を見下ろす。
「菜月、今から話すことを真面目に聞いてくれるか」
菜月はごくりと唾を飲み込んだ。
そんな意味深な言い方で前置きをされたら、身がまえてしまう。
