結局、翔流の提案通り、翌日落書きの犯人を突き止めるべく、朝一番に教室に入った。
教壇の陰に身をひそめ、犯人がやってくるのを、じっと待つ。
膝を抱えながら、菜月はそっとあくびをかみ殺す。
朝早く起きるのもつらかったが、パパに怪しまれないよう家を出るのも一苦労だった。
自分が嫌がらせを受けていることはパパには話していない。
心配をかけたくなかったから。
「こんな朝早く来る必要あるのかな」
「菜月が登校する頃には、すでに落書きはされている。つまり、犯行は間違いなく早朝だ」
「誰がやったかなんて、知りたくないんだけどな」
「昨日も言ったけれど、このまま相手に好き勝手をさせるのも悔しいだろう。とっ捕まえて、何でこんなことをするのか、聞き出してやる」
教壇の下、肩が触れ合うほどの距離に翔流がいる。
翔流くんって、クールで他人とはあまりかかわりたくないって印象があったけれど、意外に熱いんだね。
それに、ちょっと、子どもっぽいところもあるし。
ここ数日で、翔流の意外な一面をたくさん見たかもしれない。
菜月はちらりと横にいる翔流に視線を移す。
そもそも、アイドルみたいにきれいな顔をしているのに、霊能者だもんな。
本当に男の子なのに整った顔なんだね。
うわ、肌きれい。
まつげも長い。
って、何見とれているのよ!
菜月は頬に手をあてた。
思いのほか、相手の顔が間近にあることに今さら気づいて息を止める。
どうしよう。
心なしか顔が熱いような。
こうして、翔流くんとくっついているから?
菜月は手でぱたぱたと顔をあおぐ。
胸がドキドキする。
心臓の音が隣にいる翔流に聞こえてしまいそうなほど。
意識しだした途端、さらに胸のドキドキが止まらない。
犯人を捕らえるのではなく、翔流と触れ合うくらいに接近していることの緊張で菜月は頭の中がぐるぐる回って混乱する。
しかし、そんな菜月を我に返らせたのは、翔流の一声であった。
「誰か来た」
教室の扉が静かな音をたて、開かれた。
何者かが、足音を忍ばせて教室に入ってくる。
菜月は口元に手を当て、息を飲み込む。
いったい、誰?
教壇の陰から顔を出すと、一人の女子が菜月の机の前でごそごそしているのが見えた。 その人物は、翔流に告白をした小山佳珠子であった。
「小山さん……」
うっかり菜月は声をもらす。
佳珠子も菜月の存在に気づいたようだ。
咄嗟に教室から出て行こうとする佳珠子を、逃がさないとばかりに翔流が飛び出し腕を掴んで引き止める。
「何やってんだよ!」
佳珠子の手には油性ペンが握られていた。
「やっぱり、おまえか」
「し、知らない!」
この期に及んでも、佳珠子はしらを切る。
「知らないじゃないだろう。菜月の机に嫌がらせをしたのはおまえだな!」
翔流の剣幕に押された佳珠子は、とうとうあきらめたのか、がくりと肩をおろす。
その肩が小刻みに震えていた。
教壇の陰に身をひそめ、犯人がやってくるのを、じっと待つ。
膝を抱えながら、菜月はそっとあくびをかみ殺す。
朝早く起きるのもつらかったが、パパに怪しまれないよう家を出るのも一苦労だった。
自分が嫌がらせを受けていることはパパには話していない。
心配をかけたくなかったから。
「こんな朝早く来る必要あるのかな」
「菜月が登校する頃には、すでに落書きはされている。つまり、犯行は間違いなく早朝だ」
「誰がやったかなんて、知りたくないんだけどな」
「昨日も言ったけれど、このまま相手に好き勝手をさせるのも悔しいだろう。とっ捕まえて、何でこんなことをするのか、聞き出してやる」
教壇の下、肩が触れ合うほどの距離に翔流がいる。
翔流くんって、クールで他人とはあまりかかわりたくないって印象があったけれど、意外に熱いんだね。
それに、ちょっと、子どもっぽいところもあるし。
ここ数日で、翔流の意外な一面をたくさん見たかもしれない。
菜月はちらりと横にいる翔流に視線を移す。
そもそも、アイドルみたいにきれいな顔をしているのに、霊能者だもんな。
本当に男の子なのに整った顔なんだね。
うわ、肌きれい。
まつげも長い。
って、何見とれているのよ!
菜月は頬に手をあてた。
思いのほか、相手の顔が間近にあることに今さら気づいて息を止める。
どうしよう。
心なしか顔が熱いような。
こうして、翔流くんとくっついているから?
菜月は手でぱたぱたと顔をあおぐ。
胸がドキドキする。
心臓の音が隣にいる翔流に聞こえてしまいそうなほど。
意識しだした途端、さらに胸のドキドキが止まらない。
犯人を捕らえるのではなく、翔流と触れ合うくらいに接近していることの緊張で菜月は頭の中がぐるぐる回って混乱する。
しかし、そんな菜月を我に返らせたのは、翔流の一声であった。
「誰か来た」
教室の扉が静かな音をたて、開かれた。
何者かが、足音を忍ばせて教室に入ってくる。
菜月は口元に手を当て、息を飲み込む。
いったい、誰?
教壇の陰から顔を出すと、一人の女子が菜月の机の前でごそごそしているのが見えた。 その人物は、翔流に告白をした小山佳珠子であった。
「小山さん……」
うっかり菜月は声をもらす。
佳珠子も菜月の存在に気づいたようだ。
咄嗟に教室から出て行こうとする佳珠子を、逃がさないとばかりに翔流が飛び出し腕を掴んで引き止める。
「何やってんだよ!」
佳珠子の手には油性ペンが握られていた。
「やっぱり、おまえか」
「し、知らない!」
この期に及んでも、佳珠子はしらを切る。
「知らないじゃないだろう。菜月の机に嫌がらせをしたのはおまえだな!」
翔流の剣幕に押された佳珠子は、とうとうあきらめたのか、がくりと肩をおろす。
その肩が小刻みに震えていた。
