「あの、その花束、どなたか亡くなったんですか?」
女性は顔を上げ、指先で涙を拭った。
「ええ……息子がここで事故に。勇人っていうんです」
母親の隣にしゃがみ、菜月も目を閉じ手を合わせた。
「勇人のために、手を合わせてくださって、ありがとうございます。勇人も喜んでいるでしょう。そう、明日が四十九日なんですよ」
「そうなんですね。きっと、ううん、間違いなく勇人くんは、お母さんに見守られながら天国に旅立っていくと思います」
「そうね。ありがとう」
母親は頭を下げ、この場から離れて行く。
「翔流くん、今の話、聞いた? 勇人くん、明日が四十九日だって!」
「それは都合がいい!」
翔流はよし、というようにうなずいた。
「都合がいい? なにが?」
「一番きれいに上にあがれる」
成仏できるってことだろうか。
だが、成仏するのにきれいなのも、そうでないものもあるのか。
再び、翔流は勇人に向き合う。
「勇人くん、お母さんの元に行くといい。お母さんと一緒に家に帰るんだ。しっかり手を繋いで、絶対に離れてはいけないよ」
『うん、わかった! ママー!』
と、嬉しそうな声を上げ、勇人は母親の元へと駆けて行く。
一度だけ、こちらを振り返った勇人くんのお母さんが、会釈をして微笑んだ。
その母親の手に、勇人は自分の手を重ね、ともに歩き出す。
翔流と菜月はその姿が見えなくなるまで見送った。
もっとも、菜月には勇人の姿は視えないが。
ふと、学校で噂の都市伝説を思い出す。
『小さな子どもの霊が、誰かを探して、手を繋いでくるって』
その噂は、もしかしたら勇人くんのことだったのか。
「ねえ、翔流くん、さっき四十九日なら都合がいいって言ったのはどういう意味?」
「ああ、四十九日は故人が、この世からあの世へと旅立つ節目の日。つまり、僕があの子の浄霊を手伝わなくても、家族が手厚く見送ってくれる。一番確かで、きれいに上にあがれる方法だ」
「浄霊って?」
質問ばかりでもどかしい。
「成仏と言えば、菜月には分かりやすいか?」
「成仏って、翔流くんはそんなことまでできるの? 翔流くんって、いったい何者?」
「霊能者」
「霊能者! 心霊番組とかでみるあれ?」
「霊や霊障で悩みを持つ人の手助けをしている。除霊、浄霊、霊視など、霊にかかわることならわりとなんでも」
「驚いた。お祓いもできるんだ」
「前から、この横断歩道を通るたびに、あの少年のことが気になっていた。できることなら浄化させてあげたいと思ってずっと機会をうかがっていた。あの子のお母さんが、頻繁に、それもこの時間に花を持って訪れることを知り、やってみようと思った」
「そうなんだ。それで四十九日の今日を狙っていた」
「いや、それは偶然。だけど、結果的にうまくことが運び、あの子は救われた」
「うん」
よくわからないけれど、あの子が救われたのならそれでいい。
ふと、翔流は視線を斜めに移す。
「実は、もう一人助けたい人がいる」
「もう一人、誰?」
「あそこ」
あそこと言って、翔流は昼間、不審者が座っていたあたりを指さす。
不審者の姿は今はないが。
女性は顔を上げ、指先で涙を拭った。
「ええ……息子がここで事故に。勇人っていうんです」
母親の隣にしゃがみ、菜月も目を閉じ手を合わせた。
「勇人のために、手を合わせてくださって、ありがとうございます。勇人も喜んでいるでしょう。そう、明日が四十九日なんですよ」
「そうなんですね。きっと、ううん、間違いなく勇人くんは、お母さんに見守られながら天国に旅立っていくと思います」
「そうね。ありがとう」
母親は頭を下げ、この場から離れて行く。
「翔流くん、今の話、聞いた? 勇人くん、明日が四十九日だって!」
「それは都合がいい!」
翔流はよし、というようにうなずいた。
「都合がいい? なにが?」
「一番きれいに上にあがれる」
成仏できるってことだろうか。
だが、成仏するのにきれいなのも、そうでないものもあるのか。
再び、翔流は勇人に向き合う。
「勇人くん、お母さんの元に行くといい。お母さんと一緒に家に帰るんだ。しっかり手を繋いで、絶対に離れてはいけないよ」
『うん、わかった! ママー!』
と、嬉しそうな声を上げ、勇人は母親の元へと駆けて行く。
一度だけ、こちらを振り返った勇人くんのお母さんが、会釈をして微笑んだ。
その母親の手に、勇人は自分の手を重ね、ともに歩き出す。
翔流と菜月はその姿が見えなくなるまで見送った。
もっとも、菜月には勇人の姿は視えないが。
ふと、学校で噂の都市伝説を思い出す。
『小さな子どもの霊が、誰かを探して、手を繋いでくるって』
その噂は、もしかしたら勇人くんのことだったのか。
「ねえ、翔流くん、さっき四十九日なら都合がいいって言ったのはどういう意味?」
「ああ、四十九日は故人が、この世からあの世へと旅立つ節目の日。つまり、僕があの子の浄霊を手伝わなくても、家族が手厚く見送ってくれる。一番確かで、きれいに上にあがれる方法だ」
「浄霊って?」
質問ばかりでもどかしい。
「成仏と言えば、菜月には分かりやすいか?」
「成仏って、翔流くんはそんなことまでできるの? 翔流くんって、いったい何者?」
「霊能者」
「霊能者! 心霊番組とかでみるあれ?」
「霊や霊障で悩みを持つ人の手助けをしている。除霊、浄霊、霊視など、霊にかかわることならわりとなんでも」
「驚いた。お祓いもできるんだ」
「前から、この横断歩道を通るたびに、あの少年のことが気になっていた。できることなら浄化させてあげたいと思ってずっと機会をうかがっていた。あの子のお母さんが、頻繁に、それもこの時間に花を持って訪れることを知り、やってみようと思った」
「そうなんだ。それで四十九日の今日を狙っていた」
「いや、それは偶然。だけど、結果的にうまくことが運び、あの子は救われた」
「うん」
よくわからないけれど、あの子が救われたのならそれでいい。
ふと、翔流は視線を斜めに移す。
「実は、もう一人助けたい人がいる」
「もう一人、誰?」
「あそこ」
あそこと言って、翔流は昼間、不審者が座っていたあたりを指さす。
不審者の姿は今はないが。
