月と秘密の約束

それから数日。
ひよりは毎日、夜になると空を見上げていた。
ひより(今日じゃない…まだ満月じゃない…)
カレンダーに丸をつけながら、ため息をつく。
ひより「……こんなの、初めてかも」
誰かに会いたくて、こんなに待つなんて。
そして――満月の夜。
ひよりは急いであの公園へ向かった。
ひより「……いるかな」
少し不安で、でも期待して。
すると――
ルナ「ちゃんと来たんだ」
ひより「っ……!」
振り返ると、あの日と同じ場所に彼がいた。
ひより「ルナ……!」
思わず、少し走って近づく。
ルナ「そんなに慌ててどうしたの」
ひより「だって…もう会えないかもって思ってたから…!」
ルナ「……」
一瞬だけ、ルナの表情が揺れる。
ルナ「約束したでしょ。満月の夜に来るって」
ひより「うん…でも、ほんとに来てくれるなんて…」
安心したのか、少し笑うひより。
ルナはその顔をじっと見つめて――
ルナ「……ちゃんと笑ってる」
ひより「え?」
ルナ「約束、守ってるね」
そう言って、少し優しく微笑む。
ひより(まただ…この感じ…)
胸が、ぎゅっと苦しくなる。
2人は並んでベンチに座る。
ひより「ねぇ、ルナって普段どこにいるの?」
ルナ「秘密」
ひより「えぇ〜!教えてよ〜!」
ルナ「無理」
ひより「ケチ!」
ルナ「……ふっ」
小さく笑うルナ。
その距離が、少しずつ近づいていく。
ひより「ねぇ…また会えるよね?」
ルナ「……」
ルナは少しだけ空を見上げる。
ルナ「満月の夜なら」
ひより「それ以外は?」
ルナ「……無理」
ひより「なんで?」
ルナ「……そういう存在だから」
ひより「存在…?」
その言葉に、ひよりは首をかしげる。
そのとき――
雲が少しだけ月を隠した。
すると――
ルナの体が、少しだけ透ける。
ひより「……え?」
ルナ「っ…!」
ルナはすぐに空を見上げる。
ルナ「……もう時間か」
ひより「時間って…?」
ルナ「月が隠れると、俺はここにいられない」
ひより「そんなのって…!」
ひよりは思わず、ルナの腕を掴む。
でも――
すり抜ける。
ひより「……え…?」
ルナ「……触れられないよ、俺には」
ひより「やだ…そんなのやだよ…!」
ルナ「……」
少しだけ、悲しそうな顔をするルナ。
ルナ「だから言ったでしょ」
ひより「え…?」
ルナ「会えるのは、特別な夜だけ」
完全に月が雲に隠れる直前――
ルナ「ひより」
ひより「なに…?」
ルナ「……次の満月まで、ちゃんと待ってて」
ひより「……うん」
ルナ「……絶対、来るから」
そう言って――
彼の姿は、光のように消えた。
ひよりはその場に立ち尽くす。
ひより「……触れられないなんて…」
胸が、ぎゅっと痛む。
でも――
ひより(それでも…会いたい)