隣に座る彼の腕は、思っていたよりもずっとたくましい。
大きくて骨ばっていて、でも動きに無駄がなくて。
――男の人の手だ。そう思った。
大輝の手はもっと細くて、爪の形が綺麗なところが好きだったけど、先輩の手は掴まれたら簡単には敵わなさそうな、そんな強さと色気を持っていた。
自分とはまったく違う、男という生き物。
この人に、この手に触れられたら、どんな気持ちになるんだろう……。
そんな想像が勝手にわき上がる。
「……どした?」
ふいに低い声が耳もとで響いて、はっと我に返る。
隣にいた先輩がこちらに体を傾けていた。
距離が縮まり、心臓が飛び跳ねる。
その瞬間ふわりと香ったのは、タバコの匂いと微かにスパイシーな香水の香り。
それが、彼の体温に甘く溶ける。
私は思わず息を飲む。
頭がくらくらするほど蠱惑的な夜の香り。
彼の吐息まで感じられそうな距離に、動揺が大きくなる。
「……なに。俺のことじっと見てた?」
くすっと笑った声には、いつもの余裕と、少しだけ意地悪な気配が混じっていた。


