【二十二時】
大きな案件を終え達成感でいっぱいの私は、恋人の大輝と話をしたくて仕方がなかった。
「今回の仕事は来春公開の映画でね。アシスタントとしてだけど、私もコンポジットに携わらせてもらえてて……」
興奮気味の私とは対照的に、大輝はスマホをいじりながら「へー」とおざなりな相槌を打つ。
「一応スタッフロールに私の名前ものるんだよ。アシスタントコンポジター・中川凛って」
「大袈裟だな」
「だってうれしいんだもん。神谷先輩にも『お前の画作り悪くないよ』って褒めてもらえて――」
そう言うと、大輝がスマホから視線を上げた。
彼の表情がすっと曇る。
「お前、そいつの話ばっかするよな」
急に部屋の温度が下がった気がした。
私は戸惑いながら大輝を見る。
「いや、だって。尊敬する先輩に褒めてもらえたらうれしいでしょ」
「へぇ。尊敬する先輩ね」
嫌味をこめられた声のトーンに眉をひそめた。
「なにその言い方。浮気でも疑ってるの?」
「そうじゃねぇけど」


