神谷先輩は私の憧れだった。
大学時代。
たまたま見た映画の光の美しさに胸を打たれた。
監督のインタビューを読み漁り、コンポジターという職業があることを知った。
その映画を担当した映像制作会社でアルバイトとして働き出し、神谷先輩に会った。
コンポジター・神谷湊。繰り返し見たスタッフロール。
何度も名前を目にしたその人が、目の前にいる。
感激で泣きそうになりながら、神谷さんが担当した映画がきっかけでバイトを始めたと私が言うと、彼は『物好きだな』と笑った。
『こいつ、俺がもらっていい?』
そのひと言で、私は神谷先輩のアシスタントになった。
そしてコンポジットの技術や知識を叩きこまれ、いつの間にか社員になっていた。
本当は、初めて出会った瞬間から私の心は神谷先輩に奪われていた。


