ぎゅっと手のひらを握りしめると、彼の体が離れた。
「俺も浴びてくる。お前は寝室のベッドで寝てろ。俺はリビングのソファを使うから」
そう言われ、思わず顔を上げた。
「え……?」
自分でも、なんでそんな声が出たのかわからなかった。
そんな私を見下ろし、神谷先輩が目を細める。
「なに。俺と一緒に寝たかった?」
冗談めかして言ったその声が、ひどく意地悪で、ひどく甘かった。
「ち、ちが……っ」
心臓が大きく跳ねる。
口をぱくぱくとさせながら、私はなんとか言い訳を探した。
「だって……先輩、その場限りの相手とするほうが気持ちいいって……」
声がかすれる。
それを聞いて、先輩は優しく笑った。
「だからだろ」
落ち着いたトーンでそう言われ、「え……?」と目を瞬かせる。
「お前みたいなかわいい後輩を、その場限りで抱くほどクズじゃない」
そう言って、ぽんと私の頭をなでた。
その手の温度に、心臓が苦しいくらい締めつけられた。
――ずるい。そんなことを言われたら、ますます先輩を好きになってしまう。


