【二十四時四十分】
先輩の部屋は、想像していたよりもずっとシンプルで、男の人の匂いがした。
余計な物がない分、彼の存在を強く感じてしまう。
「……シャワー、ありがとうございました」
タオルで髪を押さえながら、私はそろそろとリビングに出る。
着ているのは、先輩のシャツ。
長めの袖は指先まで隠れるし、裾も太ももまで届く。
「ぶかぶかだな」
ソファに座っていた神谷先輩が、私を見て笑った。
子ども扱いされてるみたいで、ちょっと悔しい。
「ちゃんと髪、乾かしたか?」
そう言って手招きされ、私は緊張しながら近づく。
距離が縮まると、彼の匂いが強くなる。
タバコとスパイシーな香水の香り。
シャツの胸もとを握りしめながら「乾かしましたよ」と答えると、先輩が短く笑った。
「はは。お前から俺の匂いがするの、変な感じ」
その言葉に、くん、と心臓が引っ張られた気がした。
まるで、自分がこの人のものになってしまったみたいで、うまく呼吸ができなくなる。
どうしよう、緊張で神谷先輩の顔が見れない。


