毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

鈴音は眉をひそめた。
茶を侮辱された。
それは、自分を侮辱されたのと同じだった。
皇帝が立ち上がった。
会場が静まり返る。
「茶の話が出たので」
皇帝は会場を見渡した。
「茶妃に、茶を淹れさせよう」
その言葉に、会場がざわめいた。
皇太后の顔が強張った。
「陛下、それは……」
「構わぬ」
皇帝は手を上げた。
「茶妃、前へ」
鈴音は立ち上がった。
心臓が高鳴る。
会場の全員が、自分を見ている。
中央へ歩く。
長い道のりに感じた。
皇太后の視線が、突き刺さる。
冷たい視線。
でも鈴音は、顔を上げた。
堂々と歩く。
中央に着くと、侍女たちが茶器を運んできた。
鈴音は深呼吸をした。
全てを忘れる。
ただ、茶を淹れることだけに集中する。
茶碗を手に取った。
抹茶を入れる。
湯を注ぐ。
茶筅を手に取り、点て始めた。
シャカシャカシャカ。
茶筅の音が、静寂の会場に響く。
鈴音の所作は、完璧だった。
前世で学んだ、正式な点前。
一つ一つの動作に、無駄がない。
流れるような動き。
美しい所作。
湯気が立ち上る。
茶碗の中で、抹茶が踊る。
濃い緑色。
光を受けて、宝石のように輝く。