毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

鈴音はふと思いついた。
「陛下」
「何だ」
「野点、したことありますか?」
皇帝は首を傾げた。
「野点?」
「外でお茶を飲むことです。茶室ではなく、自然の中で」
鈴音は説明した。
「簡素な道具だけで、その場でお茶を点てます」
皇帝は興味深そうに聞いていた。
「面白そうだ」
「では、今からやりましょう」
鈴音は立ち上がった。
「少しお待ちください」
茶室に戻り、必要な道具を持ってきた。
茶碗、茶筅、抹茶、小さな鉄瓶。
そして敷物と炭火。
広場に戻ると、皇帝はまだ座っていた。
空を見上げている。
穏やかな表情だった。
鈴音は準備を始めた。
敷物を広げる。
その上に茶器を並べる。
炭火を起こし、鉄瓶を乗せる。
皇帝は興味深そうに見ていた。
「こんなに簡素なものなのか」
「はい。野点の良さは、簡素さにあります」
鈴音は微笑んだ。
「余計なものを削ぎ落として、茶だけに集中する。自然と一体になる」
湯が沸いた。
鈴音は茶碗に抹茶を入れた。
湯を注ぐ。
茶筅で点てる。
シャカシャカという音。
その音だけが、静寂の中で響く。
青空の下、簡素な茶席。
でもそれが、何よりも美しかった。
鳥がさえずる。