毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

鈴音は頷いた。記憶の中にある知識と一致する。
「皇太后様は、皇帝様が力をつけることを恐れています。だから、皇帝様に近づく者を……」
翠蘭の声が途切れた。
「排除する」
鈴音が続きを言った。
「そういうこと」
翠蘭は涙を拭った。
「お妃様は、茶会で皇帝様に気に入られそうだった。皇帝様の目が、お妃様を見ていました。優しい目で」
だから。
鈴音は全てを理解した。
皇太后は、鈴音が皇帝の寵愛を得ることを恐れた。だから毒を盛り、その罪を鈴音に着せた。
陰謀。権力闘争。
茶とは何の関係もない、醜い争いの犠牲になったのだ。
翠蘭が去った後、独房には静寂が戻った。
鈴音は窓の格子から見える月を眺めた。満月だった。優しい光が独房を照らしている。
目を閉じると、前世の記憶が蘇った。
日本茶カフェの小さな店内。白い壁。木のカウンター。
常連客の笑顔。
「今日も美味しいね」
「この抹茶、最高だよ」
「また来るね」
一人一人の顔が、鮮明に思い出される。
茶を淹れる喜び。人を笑顔にする幸せ。
あの日々は、穏やかで満たされていた。
鈴音は目を開けた。涙が頬を伝う。
「また、あの笑顔を見たい」