毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

それとも、天に?
答えは返ってこなかった。
鈴音は目を閉じた。
前世の記憶が蘇る。
日本茶カフェの小さな店。
白い壁。木のカウンター。
一人で店を切り盛りしていた日々。
「あの頃の私は、何を望んでいた?」
自分に問いかける。
前世の自分が答える。
内的な対話が始まった。
『特別なことじゃなかった』
前世の自分が言う。
『ただ、お客さんに喜んでもらいたかった。美味しい茶を淹れて、笑顔を見たかった。それだけだった』
鈴音は目を開けた。
「人を笑顔にしたかった。ただそれだけ」
声に出して言った。
それが、自分の原点だった。
権力も、地位も、望んでいなかった。
ただ、茶を通じて人を幸せにしたかった。
では、今は?
鈴音は茶室を見渡した。
豪華な茶室。専用の茶園。茶妃という地位。
前世では想像もできなかった環境。
でも、本質は変わっていない。
茶を淹れて、人を笑顔にする。
それは、今も同じだった。
足音が聞こえた。
軽い足音。
扉が開いた。
翠蘭だった。
手には茶碗を持っている。
「お妃様、失礼します」
小さな声。
「温かいお茶を、お持ちしました」
鈴音は微笑んだ。