毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

「父は必死に制御しようとした。感情を殺し、冷静でいようとした」
皇帝の手が、僅かに震えた。
「でも、ある日……」
声が途切れる。
長い沈黙。
やがて、皇帝は続けた。
「父は龍化を制御できなくなった」
その声は、痛みに満ちていた。
「完全に龍になった。理性を失い、暴走した」
鈴音は固唾を飲んだ。
「宮殿を破壊し、街を焼いた」
皇帝の目が、遠くを見ている。
過去を見ている。
「民を殺した。何十人も。何百人も」
拳を握りしめる。
「朕は、その光景を見ていた」
鈴音は息が止まりそうだった。
「まだ十歳だった。隠れて、震えながら見ていた」
皇帝の声が震えた。
「金色の巨大な龍が、街を破壊していく。炎が全てを焼き尽くす。悲鳴。血。死体」
目を閉じる。
「地獄だった」
沈黙。
重い、重い沈黙。
「やがて父は、正気を取り戻した」
皇帝は目を開けた。
「自分が何をしたのか、理解した。そして……」
声が途切れる。
「自ら命を絶った」
鈴音は胸が締め付けられた。
「朕の目の前で。剣を手に取り、自分の喉を……」
皇帝の手が喉元に触れる。
「血が、噴き出した。父は倒れた。朕に向かって、最後の言葉を残して」