毒姫の汚名を晴らした茶妃は、龍帝に溺愛されて後宮を変える

「陛下!」
鈴音は立ち上がり、皇帝の手を握った。
「落ち着いてください」
皇帝は鈴音を見た。
金色の目。その奥に、制御できない怒りが渦巻いている。
「お前の茶園を……」
声が低く唸るように変わっていく。
「朕の……」
鈴音は両手で皇帝の手を包んだ。
「私は大丈夫です」
真っ直ぐに見つめる。
「落ち着いて。お願い」
でも龍化は進んでいた。
皇帝の呼吸が荒くなる。
鱗がさらに広がっていく。
鈴音は素早く動いた。
茶器に向かう。
抹茶を茶碗に入れる。
湯を注ぐ。
茶筅で点てる。
シャカシャカシャカ。
その音だけが、緊張した空気の中で響いた。
鈴音は茶碗を持ち、皇帝の前に跪いた。
「どうぞ」
差し出す。
皇帝は荒い呼吸をしながら、茶碗を受け取った。
手が震えている。
茶碗を口に運ぶ。
一口飲んだ。
鈴音は固唾を飲んで見守った。
緑色の光が、皇帝の体内を巡っていく。
幻視が見える。
龍の影が暴れている。でも緑の光がそれを包み込む。
優しく、でも確実に。
皇帝の目が、徐々に黒に戻っていく。
鱗が消えていく。
呼吸が落ち着く。
茶碗を置いた皇帝は、自分の手を見た。
震えが止まっている。
長い沈黙。